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第10回入賞作品


応募総数727作品から、第1次選考・第2次選考・最終選考を経て、大賞1作品、絵本屋さん特別賞1作品が決定いたしました。
たくさんの素晴らしい作品をお送りいただき、誠にありがとうございました。
 
be絵本大賞事務局
 


大賞『かいとう あっといま The phantom thief instant』塚本ユージ/ Yuji Tsukamoto

かいとう あっといま The phantom thief instant
STORY
楽しい時間はアッというまに終わってしまう。それは“かいとう あっというま”という大泥棒のしわざ。遊園地で大はしゃぎのエミリー、「チッ チッ チクタク…」 どこからともなく“あっというま”が楽しい時間を盗んでいく。うれしい誕生会もおでかけも“あっというま”に盗まれて。こまったこまった。でもストップはかせの発明で“あっというま”がつかまった。みんなは大喜び! 楽しい時間は終わらない。それを見て“あっというま”が悲しんだ! おこった! さぁ、どうなる? …「こどもでいる じかんも アッというまにおわってしまう」
選評
秋元 康

 子どもの頃から不思議に思っていました。楽しい時間はあっというまに過ぎてしまうけれど、勉強とか嫌なことは、なかなか時間が過ぎないのはなぜだろう。そういう大人になっても、だれもがずっと考えていることをテーマに、ストーリーとしてここまでおもしろく仕上げた塚本さんはすばらしい才能の持ち主だと思います。
 「かいとうあっというま」というタイトルも、そして、この絵も構図もすばらしい。
 まず、ストーリーや企画を思いついたら、そのストーリーを絵本の規定枚数、あるいは、想定した枚数に割り振りをしなくてはいけないですよね。台割です。さらにそれを、一枚の絵でどのようにストーリーを組み立てていくか。この映画でいうところのカット割りが非常によくできていました。
 今回もいろいろな作品の応募があり、楽しみに全部見ましたが、この作品を読み始めた時点で「大賞作品はこれだな」と思ってしまいました。それくらいクオリティが高くおもしろい作品でした。大好きな作品です。

be絵本大賞10年目にあたって

 これまでいろいろなパターンの作品が大賞になりましたが、それはどんな作品を応募するか、絵本についてみなさんがいろいろなことを考えてくださっているという事だと思います。
 そういう意味で、王道の絵本から新しいことを試みようとする絵本まで、この10年というのは絵本が進化した10年だと思います。
 昔ながらの絵本のかたち、つまり絵があって童話的なファンタジーの世界を表現したものだけではなくて、言葉のおもしろさから広がった絵本、構図的なものから広がった絵本、あるいはコンセプトから広がった絵本など、さまざまなジャンルへと角度が広がって、まさにbe絵本大賞がこの絵本の世界をいろいろな形に変えて進化させてきたと思います。
 これからもぜひ、絵本と近い関係で絵本に親しみたいと思います。

茂木 健一郎

 今年も本当にすばらしい作品がいっぱい集まりました。
 この作品は、脳は、ほとんどの情報はイメージから受けとめているのですが、そのイメージの世界で、よく考えられた情報の伝え方をしています。このような作品は珍しいと思います。
 キャラクターもかわいいですし、それと構図が、ちょうど脳に一番いいかたちで物語がストンとはいってくるような構図になっている。これは、まさに芸術ですよね。
 作者の塚本さんは脳科学者じゃないと思いますが、脳科学者と同じくらい人間の脳のことをわかっていますね。本当にすばらしい作品でした。

be絵本大賞10年目にあたって

 絵本は人間の脳にとって本当にすばらしい栄養であり、この栄養を受けとめて子どもも大人も育っていくと言えますが、その絵本はまだまだ進化する可能性があると思います。
 10年振り返ると、たとえば、スマートフォンで観るといいんじゃないかなと思えるような、スマートフォン絵本みたいな作品や、現代アートっぽい絵本もでてきている。いろんな絵本の広がりがある。
 今、人口知能がたいへん強くなってしまい、たとえば囲碁とか将棋でも人間が勝てなくなってしまいましたが、絵本を作る人工知能はまだまだ出てきていない。だから、絵本は、これからも人間が作り続けるぞと確認できた10年目だと思います。
 この先もbe絵本大賞を20年、30年と続けていったならば、その間、世界は人工知能がもっとすごくなったりとかロボットが出てきたりとか、人間を超えるものが出てくると思うのですが、絵本の世界だけは、人間が作り、人間が楽しむものとして残っていくのではないでしょうか。
 つまり、絵本はもっとも人間らしい営み、ワンダーワールドとして残るのかなという思いを強くしました。本当に素敵な10年だったと思います。

武田 双雲

 これまで感動作品はたくさんありましたが、完成度ということでは、ぼくの中ではこの作品が一番です。
 ぼくはアインシュタインが大好きで相対性理論というのがありますが、このストーリーはまさにその世界で、時間とはなにかを考えさせてくれる。最新の科学では、時間というものは三次元の世界では矢印が一方向に向かっていますが、四次元、五次元の世界では、そもそも時間などというものはあったり、なかったりと般若心経の世界になってくる。
 そういう言葉にできない世界をこんなファンタジーに表現できているこの作品は、アインシュタインが生きていたら、絶対喜ぶ絵本だと思います。
 人間と時間というテーマをここまでの画力で表現できるというのはすごい事だと思います。あと、本文中「ずっというま」という言葉がでてくるのですが、「あっというま」と「ずっというま」という日本語の使い方もすごく好きです。「かいとうあっというま」はシリーズ化もできそうで、伸びしろがまだまだありそうですね。
 こういう作品がbe絵本大賞から生まれるのはすごくうれしく思います。
 受賞の塚本さんおめでとうございます。これからも頑張ってください。

be絵本大賞10年目にあたって

 10年、変なおじさんたち(笑)、秋元さん、茂木さんという個性的な先輩方といっしょに選考をやらせていただいていますが、自分も作品を生み出す者として非常に勉強になり、秋元さんとか茂木さんの言葉が自分に言われているようにも感じます。
 書もそうですが、ただ技術が上手いだけとか、絵が上手いだけではだめで、やはり総合的な技術が必要だし、時代性もあったりするのですが、be絵本大賞に選ばれた作品たちを見ていると普遍的な、いつの時代でも伝わるような強さを持っていると思います。
 選考を10回やると、ぼくも絵本の世界もわかってきたような気になっているところもありますが、絵本の世界は、まだまだ改革の伸びしろがあると感じていますし、書道家としても逆に奮い立たされる、ぼくもここまでやってきてよかったとすごく感謝してます。売れる作家がここからでてくればうれしいしです。

塚本 ユージ / Tsukamoto Yuji
プロフィール
東京都出身。日大芸術学部デザイン学科卒業。
大学卒業後、フリーターをしながらミュージシャンを目指すも断念。
結婚後、3年間3社の会社を経験。
子どもが2才の時に会社を辞めフリーのデザイナーになる。
現在は、「ミミアンジュール」という作品を軸に、
親子ワークショップやグッズデザイン、絵ポエム等、
絵とメッセージを融合させた作品を発信している。
 
受賞コメント
9年前、子どもと一緒いたくて会社を辞め、フリーのデザイナーになりました。
お腹はからっぽでしたが、家族と過ごす時間は心をいっぱいにしてくれました。そこで生まれた「嬉し楽しい・切なく寂しい」たくさんの感情たち。
その一人がこの絵本に出てくる《かいとう あっというま》。
毎日子どもたちと、これでもかというくらい一緒にいても、
時間はアッというまに過ぎていく。これはもしかして《あっというま》の仕業だな!と気づいた時、彼と出会い、この作品が生まれました。
「今、この瞬間を大切に…」
たくさんの子どもたちと、元子どもたちに、
そんなメッセージが届きますように…

素敵な賞をいただき、心からありがとうございます。
この気持ちと経験を、《あっというま》に盗まれる前に、
誰かの心に届くような、毎日がちょっとハッピーになるような、
そんな作品たちをこれからも引き連れていきます。